退職金を賢く運用できる商品と付き合う方法
団塊世代が定年退職を迎える二〇〇七年を目前に控え、金融機関ではあの手この手の退職金争奪合戦を繰り広げている。
メーンバンクを筆頭に、運用をすすめるダイレクトメールや電話攻勢が相次ぎ、「運用しなければ」というプレッシャーを感じる人も多いはずだ。しかし焦る必要はまったくない。むしろ、じっくり考えてから行動を起こすことを提案したい。
どの金融機関も今、投資信託(投信)や変額年余保険といったリスク商品の販売手数料を収益の柱に育てている。その戦略のーつとして最近とみに広告で見かけるのが、預金と投信をセットにすることで罰金金利が優遇されるタイプの商品だ。
預金金利が破格の水準に設定され、お得感を強調しているが、そこにはカラクリが隠されている。優遇金利が適用されるのは、実際のところ「三ヵ月」などわずかな期間にすぎず、その後は一般の金利(=超低金利)が適用されるのだ。
また投信には値動きがあり、高値買いを避けるには、本来なら時期を何回かに分けて購入する「時間分散」を図るのが定石。優遇金利に惑わされて投信をまとめ買いするのは賢明ではないのだ。
そもそも投信という商品は、販売時に販売手数料が発生するほか、保有中に運用や管理コストとして差し引かれる信託報酬(要は手数料のこと)の一部も販売会社の収入となるなど、売る側にとって旨みの多い商品。その入り目、つまり餌として一定期間の金利優遇を行っているにすぎないわけだ。
「退職金運用プラン」と銘打った商品も多く、消費者心理として「自分の目的に介うはずだ」と勝手に先入観を持ってしまいがち。「教育費には子ども保険」と思い込んでしまうのと同じことで、多くの場合は普通の金融商品を自前で組み介わせたほうが効率的に運用できるものだ。
では、どうすればいいのか?
今後はインフレ傾向が続くとみられる一方で、銀行は預金獲得に力を人れる必要性が低く、罰金金利の大幅アップは期待しにくい。公的年金も物価上昇率と完全には連動しない。老後資金に余裕があるなら無理にリスクをとる必要はないが、そうでない場合は、お金の実質的な価値を目減りさせないためにもリスク商品を活用した運用が必要といえる。
具体的には、住宅ローンが残っている場合は退職金で完済するのがセオリーだが、残低額が少ない場合や運用によってローン金利より高い利回りが狙えそうなら必ずしも返済を急ぐ必要はない。
まずは当面、使わない分はひとまず三ヵ月か六ヵ月の定期預金にする。これで時間稼ぎをして、退職金という大金に舞い上がった頭を冷やし、じっくりと運用について考える時間をとるようにする。
退職金は一気に使うものではなく、少しずつ取り崩していくものだ。六ト代で使う分は運用できる期間が短いものの、七十代以降で使う資金はー〇年以上運用できるため、十分、リスクをとった運用もできる。一目に退職金といっても、う時期によって運用の方針や手法が違ってきても当然のことなのだ。
そこで、まずは六十代、七十代、八十代以降に使う分に分けてみる。一般に高齢になるほど趣味やレジャーに使う金額が減り、必要な資金も少なくなる。「六十代は三、七十代は二、八十代以降はー」といった具合に退職金を割り振り、年金の受給見込み額(社会保険庁に確認する)をベースに必要な額を具体的に計算してみる。病気や介護が心配なら五○○万円程度をまず確保し、残額を年代別に分けて
もいいし、長生きに備えたいなら八十代以降の割合を高めるなど、夫婦で話し合ってみることだ。
使う時刻によって資金を分けたら、そこではじめて最適な金融商品の選択を考える。例えば六十代で使う分は、安全性と引き出しやすさを重視した商品を選択する。使う時期に満期がくるよう、三カ月、六ヵ月、一年といった短期の定期預金に頂け分けるのも一案。変動金利型の個人向け国債二〇年物「変動10」も購入一年経週後には中途解約ができ、金利上昇の波にも乗れる有利な選択肢だが、中途解約では直近二回分の税引き前利子が差し引かれるので、使うまで二年以上ある資金で購入するのがポイントだ。
また人気の高い「毎月分配型投信」は、運用実績に応じて毎月、分配金が支払われるため、「お小遣い感覚でもらえる」点がウリ。実際は毎月一定額の分配合が払い出される分、連用の原資となる元本が増えにくく、投資効率が劣るという短所はある。だが、定期的な収入がなくなったリタイア層には、月々わずかながらも分配金を受け取れることで充足感や安心感が得られる効果は大きい。ただし分配
金は運用実績に応じて支払われるため、確実性に欠けることは念頭におきたい。
七十代以降で使う資金については、株式投資や株に投資する投信などで積極的にリターンを狙ってもいいだろう。ある程度値上がりしたら売却益を確保すること、また使う時期が近づいたら安全性の高い商品に乗り換えることも大切だ。
四十代でも老後に不安を抱く人はいるだろうが、老後をどう生きるかによって必要な額は異なる。いつまで、どんな方法で働くか、リタイア後はどこで暮らしたいかなど、おおまかな青写真を描き、その目的に向かってスキルを磨き、情報を収集することのほうが先決だ。
マネー一諾を継続的に購読する、運用に関するセミナーに参加するなど、金融・証券、税制などについての知識を身につけることも大切。毎年一一月に全国で開催される日本FP協会主催のイベント(FPの日)なども活用したい。